評価

筆者にとって、『雷電』シリーズには特別な思い入れがある。1994年、筆者のシューターとしての登竜門となったのが、何あろう、当時稼動間もなかった『雷電DX』なのである。四散する破片、墜落する敵機、耳をつんざく爆発音。その時、受けたインパクトは計り知れないものであった、と記憶している。

その後1996年から1998年にかけ、『ライデンファイターズ』シリーズが世に現れたが、どれも筆者の心を満足させるには至らなかった。筆者にとって、それらは『雷電』ではなく最早別のSTGであった。何も悪いと言っているのではない。確かに『ライデンファイターズ』には独特の面白味があるが、あれらを『雷電』というにはいささか重みに欠けると、当時の筆者は感じ、その思いは今も変わっていない。そんな筆者の前に現れた本作は、まさに恵みの雨である。もう二度と『雷電』に出会えないと思っていただけに、喜びもひとしおである。

さて本題に入ろう。本作『雷電III』の魅力を一言で言い表すなら、シューターの本能に忠実なSTG、といえる。近年、そのようなSTGがほとんど見受けられないだけに、本作の魅力は一層際立つ。ただ、そういったSTGは元来、ゲームバランスの面で初心者には敷居が高過ぎた。その点、本作は適度な難易度に収まっており、初心者から上級者まで遍く楽しめる作品である。

先ず、シューターの本能に忠実という点では、フラッシュショットが挙げられる。敵をより早く破壊することでボーナスが付加される、この新システムは、的確に核心を突いている。誰でもその気になれば、程度にこそ差はあれ、スコアを稼ぐことができるからだ。

他方、難易度の点から見ると、適度なレヴェルが保たれているといえよう。最初は、敵弾が速く至近距離でも撃って来ることなどから、難しく感じられるであろうが、一方で、自機の当たり判定が小さく、意外なほど避けやすい。慣れれば、弾避けの快感を楽しめるに違いない。

また、精緻且つリアリティに富んだメカデザインも、魅力の一つであろう。近年のSTGの多くは、若干ながらもファンタジー要素が感じられ、殊にメカデザインにおいては、実際あり得ないようなものが、多々見受けられる。それが良いか悪いかは、完全に人それぞれの好みだが、現在において、それが没個性的に感じられるのは、筆者だけではないと思う。その点、本作にはカッコ良さ満載である。デザインのみならず動作一つを取っても、非常に丁寧に作られており、ここまで表現できるSTGは他に無いだろう。

ただ、適度な難易度の裏返しであろうか、やや大味な感が否めないのは惜しい限りである。

システム面で言うと、ボムの攻撃判定即発生、違うアイテムを取ってもパワーアップすることなどは、筆者にしてみれば、甘い、の一言である。ボム投下時のタイムラグをどう使うかも、『雷電』の魅力だったのに、それを無くしてしまったのはあまりに惜しい。

また演出面では、緻密さに乏しくなった。確かにグラフィックは飛躍的に美しくなったものの、今まで存在した、四散する破片及び雑魚の墜落エフェクト、ボムの爆発跡など、細やかな演出が無くなってしまったのは、残念なことである。

しかし、それでも本作は面白い。車に喩えるなら、今までの『雷電』は乗り手を選ぶピュアスポーツカーの如き存在。対して本作『雷電III』は、人それぞれが楽しめるファミリースポーツカーの如き存在、とでも言えようか。コアなファンには物足りないかも知れないが、より多くの人が楽しめる内容にまとまっていることは、大いに評価して良いはずである。

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